青の投資コラム

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179.為替レートには4種類あることを知っていますか(2020年12月2日)

経済学で使われる為替レートには4種類もあります。①名目為替レート、②実質為替レート、③名目実効為替レート、④実質実効為替レートです。名目の意味は物価上昇率を考慮しない目に見えている数字です。FXサイトなどで土日を除いて、刻々動いている数字です。実質の意味は物価上昇率を考慮した数字です。マネーはモノ・サービスの価格と比較することで、その価値が考えられます。モノ・サービスの価格である物価が上がればマネーの購買力が低下します。一方、物価が下がればマネーの購買力は高まります。実効の意味は各国との貿易額のウエートを考慮した数字です。マネーは海外の各国との取引に使われ、それを反映することで実態に近づきます。名目為替レートに実質、実効を加えた実質実効為替レートは物価上昇率と各国との貿易額のウェイトの両方を考慮したものです。


現在の為替レートが円高なのか円安なのかには議論があります。そもそも4種類あります。名目為替レートを取ってみてもその判断は簡単ではありません。2020年9月時点1ドル=106円です。2011年、2012年の平均レートである1ドル=79円に比べては円安ですが、2015年の平均レートである1ドル=121円に比べては円高です。2019年度の輸出採算レートは1ドル=100.2円で、それより上であれば円安、下であれば円高という見方もできると思います。また各企業の輸出想定レートに対するものと考えることもできます。2020年度の予算では1ドル=105円が多いと思います。


実質実効為替レートは2015年に日本銀行の黒田総裁が為替水準についてコメントした時から金融市場で注目が増した。マスメディアでも頻繁に使われるきっかけになったと思います。2015年4月の実質実効為替レートが1ドル=71.99円であるのに対して、名目為替レートでは1ドル=125円台でした。その乖離が大きいと指摘して、さらなる円安を牽制する時に使いました。実質実効為替レートは名目為替レートに貿易量と物価を調整したことで合理的と思われます。しかし実はそれは基準年を恣意的に設けて、歴史的に安いか高いか言っているに過ぎずません。BIS(国際決済銀行)の実質実効為替レートは2005年です。基準年が妥当かどうか合理的な説明はありません。


実体経済には名目為替レートの影響が大きいです。名目為替レートで見て、その輸出想定レートが円高ドル安が進むと企業収益が悪化します。名目為替レートで見て、ドルに対して強い円は輸出を抑制し、日本経済には不利です。日本の財政赤字が懸念されながらも、リスクオフになると円が買われます。財政赤字に経済破綻のリスクがあれば、こういうことは起きません。むしろ財政赤字を拡大する余地があると考えられます。また日銀のイールドカーブコントロールで長期金利は上昇せず、財政赤字を拡大しても、円高になる可能性も限られています。